コラム・ニュース

「乳がん」と向き合った方のお話

最近、「乳がん」の若年発症が話題になっているので
現在も定期的に通ってくださるご本人に了承を得た上で書きます。

鍼灸の世界は、他の治療をいろいろ受けても改善が見られず
最終手段として選択されることの多い治療法の為
なかなか聞いたことの無い様な難病で辛い思いをされている方や
医学的な治療はしていても症状が軽減せず、症状の緩和を希望される方
不妊治療など結果が出にくく辛い思いされている方
それ以外にも様々な辛い思いをされている方にお会いすることが多い中
今回コラムに書かせていただく方と出会ってからの出来事に触れさせていただこうと思いました。

その方と初めてお会いしたのはご本人が39歳の時
ご紹介で「首がずっと痛い」という症状でいらっしゃいました。

問診法を記入していただき既往歴を見て
そこに記入されていたのが「乳がん」
片方の乳房を全摘出されていました。
手術をしてから2年と書いてありました。
手術後のホルモン治療中
それにもう一つ大きな病気を抱えていました。

首の痛みが1回目の施術で改善し
鍼灸を好きになっていただけたようで
それから定期的なメンテナンスとして通っていただくようになり
身体のことはもちろんいろいろな話をして
今の希望は「妊娠したい」と知りました。
ですが、年齢の事、今飲んでいるお薬の事、もう1つの疾患の事
簡単に希望を叶えるとは言えない状況
それでも本人は強く願っていて
お手伝いすると決めて一緒に妊娠に向けてスタートをしました。

「乳がん」の手術をして2年、ホルモン治療を止めるのは再発の危険性が上がります。
それでも担当の医師としっかり相談して、もう1つの疾患担当の医師ともしっかり相談して
不妊治療を始めました。

不妊治療をしている病院で必要な治療をしていてもご本人は不安でいっぱい。
なので、私がお勤めしていた病院の胚培養士さんにも相談に乗っていただき
出来るだけのサポートをさせていただきました。
再発の恐怖と闘いながら何度かの治療を経て妊娠
それでも安心は出来ない10ヶ月。いつでも再発という恐怖が付きまといます。
再発の恐怖、年齢によるリスクに勝ち、ご本人の頑張りで無事出産。
私がお手伝い出来た事はメンタルのサポートや健康管理くらいですが
とても心に残る経験の1つとなりました。
大きな病気を抱えてそれでも前向きに生きている姿が尊敬に値しました。

病気を抱えていてもいなくても人には性格や考え方があります。
今回ご紹介した方は本当に素敵な方で、聞いている私からしたら弱音を吐いてもいいような状況でもけして弱音を吐かず
今も病気と向き合いながら過ごしています。
アンジェリーナジョリーより先に
「乳がんが再発するくらいならもう1つの胸も取ってください。」と医師に言って驚かれるような方です。
私なら胸が無くなる事で苦しみそうな問題を、「生きれるならそのくらい大丈夫」と笑って言える方。

「乳がん」の治療法は以前に比べて増えました。
がんのできた場所、ステージなどで全摘出しかない場合でも乳房の再建が出来るようにもなりました。
だからといって大丈夫なんて言えないけれど
自分にとって最善の治療や手術を考えることも出来ます。
ドクターの中には質問を多くすることを嫌がる方も実際います。
それでも出来るだけ自分の意思を伝えて
今出来る事、これから未来の事それを考えながら治療を受けて欲しいと思います。
例えば妊娠を希望される方は、抗がん剤治療前に卵子凍結を考えるとか。(金銭的な問題はありますが)

今回書かせていただいた方の例は幸せなケースです。
けして楽観的にはいられない方にとっては辛い内容だと思います。
命にかかわるような病気を抱えている方に楽観的になってくださいなんてとても言えません。
ただ、どんな状況でも性格や考え方は関係ないとは言い切れません。
私自身も性格的な問題で疾患を重くした経験があります。
だから、ご紹介した方とお会いする度、今でも生き方の勉強をさせていただいている気持ちになります。
ご本人が「もうサポートはいりません」と言うまで前向きに頑張るお手伝いをしたいと思っています。

「病は気から」その言葉を実感した出来事
他にも日々その言葉の意味を感じる出来事がたくさんあります。
ワガママになり過ぎは良くないけれど、自分の気持ちを大切にする必要はあると思います。
自分が少しでも幸せに感じる過ごし方を見つけていけたらいいですね。